【Book/Audible】連続爆弾魔の爆破を止められるのか 緊迫の心理戦で読み終えるまで眠れない 呉 勝浩「爆弾」

近所の書店に行くたびに日本のフィクションのコーナーに平積みになっていて気になっていたこちら。

呉 勝浩「爆弾」

面白すぎて止まらず、「これは読み終わらなくては眠れない」と覚悟したほど。

 

<あらすじ>

酒屋での些細な傷害事件で、冴えない風体の中年男が野方署に連行された。いつものように取り調べ室でなぜそんな行為に至ったのかを聞きだすなかで、突然男は自分には予知する能力があり、「10時に秋葉原で爆発がある」と言い出した。

戯言と思っていたら、10時に秋葉原の廃ビルが爆発。通行人が爆発に巻き込まれ、ガラス片でケガをする事態になる。

「ここから3度、次は1時間後に爆発します」

スズキタゴサクと怪しい名前の男の予言は、どこで起きるのかのヒントは会話のなかにちりばめられている。

警視庁から野方署にやってきた清宮、類家という刑事に取り調べ官が変わり、爆発を阻止するための緊迫したやりとりが続く。

「ところで、刑事さんは人を殺したいって思ったことはありますか?」

 

ネタバレしないように書くのはなかなか難しいのですが、とても映画的な作品で、場面描写から映像が浮かぶなぁと思っていたら作者の方は大阪芸術大学で映像を学んでいたとな。納得。

清宮のスーツへのこだわりと類家が刑事なのに白いスニーカーを履いているのが気になるところ、類家の「犯罪者への共感が全く感じられない」と庁内の人物評価で注視されている特性、天然パーマでもじゃもじゃ、ほかの人からするとその頭を見降ろしてしまうほどの背丈。人物のキャラクターづけも面白い。

2024年あたりの映画化確実だろうなぁ。曲者刑事の類家が出てくる別作品も読んでみたいけれど、この作者はシリーズものは書かないスタンスなのか現時点ではまだそういった作品はないですね。

 

2022年の国内ミステリー作品ランキング1位を2冠

今回知ったのですが、2022年下半期の直木賞候補にも入っています。そして、この帯にもあるように、「このミステリーがすごい!2023 国内編」「ミステリが読みたい!2023年度版」の1位に選ばれています。直木賞はもちろん日本最高峰のフィクション作品に対する文学賞です。でも一方で、限られた選者の方が選ぶわけで、選評を読んでいても選考委員の方々それぞれの文学観、価値観、死生観などとの相性もあります。読了後、論評を読むと納得できる点もありましたが、まだ未読の方はまずは作品を読むことをおすすめします。



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