大阪の家庭にはどこの家にももれなくおかしい家族がいて、それを面白可笑しく話すスキルを磨き上げることになるのです。
例えば、うちの妹の場合。
我が家は父・母・私・妹の4人家族なのですが
妹は友達から
「ちっちゃいなー」(現在でも152cmぐらい)
といわれ
「うちでは2番目に大きいもん!」
と反論したところ
「どんな小人の国やねん!」
と突っ込まれたそうです
そりゃそうだ。ちなみに、私は3番目。父は170cmあってガタイも良かったので、それほど小さいほうじゃなかったと思うのですが・・・母の遺伝子が強かったもよう。
こんな具合に、嫌でも日常がノリツッコミの展開へと流れてしまう、大阪。
大阪の芸人はこういう土壌から生まれるので、プロとしては面白くなければ日の目を見ることはないのは至極当然。
そんな大阪芸人のなかで、ダンナネタといえばこの人。
上沼恵美子さん。
年の差夫婦、趣味趣向の違い、男女差などから嫁姑問題まで、トーク相手のネタがイマイチでも、殿下の宝刀のごとく振りかざせば笑いが巻き起こる、関西の重鎮です。
旦那さんはテレビ局勤務だったのが、現在は「旅人」。
過去の夫婦の出来事を、双方の言い分で記憶を掘り起こし、同じ場面をカードの裏表のごとくそれぞれが語っています。
昨今は自分の子供を連れて番組に出たり、2世タレントがごろごろと発生していますが、息子がいることは公言しても、それをネタにはほぼしてないのです。
本作でも、出産時のエピソードぐらい。
芸として家族を出すが、子供のことはNGときっちり分けている。
やはり、上沼恵美子というひとは「しゃべくり」のプロなんですね。
「しゃべり」じゃなくて「しゃべくり」。
「しゃべり」が、言葉を出すだけとすれば、「しゃべくり」は、「しゃべって」「繰り出す」。
ただ言葉を出すだけでなく、言葉の糸を編み、リズムや次への流れを作る作業も込み。
「芸のためなら女房も泣かす」という歌詞がありますが、「上沼」という苗字から逃げられない息子たちを守ったのかもしれません。子供の失敗をネタにすることはできても、それを人にさらしたら、学校でのいじめにもつながるかもしれません。
そこをしっかりと守りながらも、繰り出すネタの数々は、この夫婦関係にしてあったのですね。
【これまでにアップした本・雑誌・漫画に関するトピックス】
●【Book】魔法のハイヒール ジミー チュウ ストーリー/ローレン・ゴールドステイン・クロウ(2012.01.15 Sunday)
●【Book】経理部って何してるの?がちょっとわかる「会計ドレッシング」(2012.01.07 Saturday)
●【Book】半径10mの人間の本性が一番怖い 「悪の教典 上・下巻/貴志祐介」(2011.12.11 Sunday)
●【Book】アレックスと私/アイリーン・M・ペパーバーグ(2011.07.22 Friday)
●【Book】シューマンの指 /奥泉 光(2011.05.29 Sunday)
●男の頭の中にはセックス以外は何があるのか?英国のベストセラー「What Every Man Thinks About Apart From Sex」の中身は…(2011.03.10)
●【Book】謎解きはディナーのあとで/東川篤哉(2011.02.12)