【Book/Audible】海外ミステリーの沼に再び。「ストーン サークルの殺人」M・W・クレイヴン

原題は「The Puppet Show」(直訳すると人形ショー)。これは本作で起きる連続殺人事件の方法が人形のように磔(はりつけ)にされ、燃やされることに由来すると思われます。

久しく海外ミステリー作品を読んでいなかったのですが、その沼に私を再び浸からせた1作。

イギリス、カンブリア州のストーンサークルで次々と焼死体が発見された。マスコミに「イモレーション・マン」と名付けられた犯人は死体を猟奇的に損壊しており、三番目の被害者にはなぜか、不祥事を起こして停職中のNCA(国家犯罪対策庁)の警察官「ワシントン・ポー」の名前と「5」の字が刻み付けられていた。身に覚えのないポーは上司の判断で停職を解かれ、捜査に合流することに。そして新たな死体が発見され……英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールドダガー受賞作。

Amazonより引用。

主人公は、ある事件を機に、イギリスの国家犯罪対策庁(NCA)を停職中の警察官ワシントン・ポー。イギリス・カンブリア州は古代イギリスの史跡「ストーンサークル」が点在しているが、あちこちで焼死体が見つける事件が多発するなか、最も新しいものの遺体には彼の名前が刻まれていた。なぜ彼が名指しされているのか?彼が次の標的なのか、それとも彼を知る犯人からの挑戦状なのか。

■2013年新設の国家犯罪対策庁所属の主人公 ワシントン・ポー


イギリスのミステリー小説というと、私が読んだシリーズものでパッと思い浮かぶのはシャーロック・ホームズやアガサ・クリスティに代表される名探偵モノと、イアン・フレミングの「007」シリーズぐらい。よって、最近の政府機関の話はさっぱりわからず、MI6どまりなので国家犯罪対策庁(NCA) は今回初めて知った次第。

NCAというのは、National Crime Agencyの略で、誕生は2013年で現時点でまだ創設10年の組織。公式ホームページを読むと、深刻な組織犯罪に対抗するために設立されていて、 運営上独立した非省庁の政府部門。イギリスといえば「United Kingdom」の英名の通り、自治権において一枚岩ではありません。よってNCAでも スコットランドと北アイルランドでの警察の権限委譲を尊重しながらの全国での捜査権限を持つとうたっています。

舞台となるストーンサークル、、愛犬は イギリスがルーツの犬種であるスプリンガースパニエル というイギリスらしさがある一方で、主人公がワシントン・ポーで愛犬の名前がエドガーとくると、アメリカの小説家エドガー・アラン・ポーとの符号もあって、こっちはアメリカだなぁと思うのですが、ワシントンというファーストネームには彼の人格を形成するのに大きな影響を与えた事実が秘められています。

そしてシリーズもののミステリー作品に欠かせないキャラクターとくれば相棒ですが、既に3作出版されているなかでレギュラーといえるのがデータ分析などをおこなうティリーと、ワシントンが休職前は部下だったフリン警部。どちらも女性ですが、対極にあるキャクターで、とくに数学の天才だが一般的な生活はまだ学習中のティリーがいい味を出しています。

海外ミステリーはその場所が未知の空間である分、想像力の翼がばっさばっさと動き、最後の一気の回収がスカッとしますが、本作もその快感を与えてくれます。私はAmazonのAudibleで読みましたが、海外ミステリーと音声コンテンツの相性はいいですね。ただ、人物名が似ていたり、登場人数が多いと、覚えきれなさそうですが、本作は主要キャラは7人以内(被害者を含まず)で、いずれもキャラ立ちしているのでAudibleデビュー向きといえるでしょう。

Audibleはここから↓詳しく。

ワシントン・ポーシリーズは2022年時点で5作の長編と1作の短編が出版済みで、日本語訳は3作目までが完了しています。ドラマ化されるという話があったようですが、現時点ではまだ世に出ていない模様。

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